線路と道路の両方を走る車両「DMV(デュアル・モード・ビークル)」の運行が、徳島県海陽町と高知県室戸市の間で12月25日に始まることになった。10日の関係自治体による協議会で決まった。両県などが出資する第三セクター阿佐海岸鉄道(本社・海陽町)が運行し、本格的な営業運行は「世界初」とされている。
DMVは、もとはディーゼル車両が走っていた路線を、マイクロバスを改造して線路用の鉄輪を付けた車両が走り、線路を下りた後はバスとして道路を走る。
運行開始時期を巡っては、2020年7月開始を当初目標にしていたが、コロナ禍で関係機関との協議や必要な認可手続きがずれ込み、工事の着手が遅れるなど延期を繰り返してきた。
今年6月の国土交通省の技術評価検討会で、鉄輪と車体をつなぐアーム部分の補強が必要と指摘され、7月の予定を年内に延期していた。その後、強度を高めたアームに付け替え、今月4日の技術評価検討会で安全性に問題ないことを確認。同日付で四国運輸局から阿佐鉄のバス区間の運送事業も許可された。
運行開始日が決まり、阿佐鉄社長で海陽町の三浦茂貴町長は「世界初が誕生する日に、クリスマスはふさわしい。町民一同大いに盛り上がり、効果が沿線に波及していくよう期待をふくらませ、カウントダウンしていきたい」、高知県東洋町の松延宏幸町長は「いよいよ、やっと、と感慨深い。住民のみなさんの関心、期待は大きいと感じている」と喜んだ。飯泉嘉門・徳島県知事は「ゴールではなく世界に向けてのスタート」と語った。
今後、習熟訓練や国の監査があり、営業運行開始前には地元向けの内覧・試乗会を実施する予定という。
DMVは「海南宍喰線」(16・1キロ)と「海南室戸線」(54キロ)の2路線で営業し、このうち阿波海南駅(海陽町)―甲浦(かんのうら)駅(東洋町)間の10キロは鉄道運行区間。両駅で鉄道とバスのモードを切り替える。
座席数18。ネットでの事前予約を12月2日から受け付ける。徳島県によると、阿佐鉄の利用者はこれまでの年間約5万人から約7万5千人に増え、約1400万円の経営改善が見込まれると試算している。
「海南宍喰線」は、阿波海南文化村(海陽町)から道の駅宍喰温泉(同)までを結び、平日13往復、土日祝日11往復(当面は臨時便を含め14往復)。道の駅宍喰温泉までの運賃は800円。ディーゼル車で450円だった阿波海南―甲浦間は500円となるが、地元の利用者向けに1200円分を千円で買える回数券を販売する。
「海南室戸線」は、阿波海南文化村から海の駅とろむ(室戸市)まで結び、土日祝日に1往復する。海の駅とろむまでの運賃は2400円。(斉藤智子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル